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口腔衛生研究所
 

お母さんのための予防講座

この講座は、NPO法人が発行している子育て情報誌『わこう子育てネットワーク通信』2004年4月〜2005年2月号に掲載されました。

◆ 予防講座第1回(妊婦さんの受診とケア)
◆ 予防講座第2回(出産後の歯のトラブルとケア)
◆ 予防講座第3回(子どもの歯並びと矯正)
◆ 予防講座第4回(虫歯予防について)
◆ 予防講座第5回(虫歯予防について、2回目)


  ◆ 予防講座第1回(妊婦さんの受診とケア)

はじめまして、歯科タケダクリニックの竹田直樹と申します。今回から5回に渡って、『お母さんとお子さんのための歯の健康』というテーマでペンを取らせて戴くことになりました。

第1回目は、妊婦さんの受診とケアについてです。
妊婦さんの歯科治療は危険だと思っている方がいらっしゃいますが、十分注意して治療を行なえば危険はありません。むしろ、これから産まれてくる赤ちゃんのためにも、お口の中はきれいにしておくべきです。例えば歯ぐきの状態が悪いと、早産や低体重児出産につながることが報告されています。また出産後、お母さんが赤ちゃんに口移しで食べ物を与えたりしますが、それと一緒にお母さんの虫歯の菌がうつってしまうこともあります。
もちろん、レントゲンや注射、投薬などで、100%安心とは言い切れません。しかし、お口の病気をそのまま放っておく方が、かえって危険を招く場合が多いのです。ですからその危険のリスクを天秤にかけ、処置をどうするのか、お決めになるのがよろしいのではないでしょうか。そのためにも、ご自分のお口の中の状態が気になる方は、かかりつけの歯科医によく相談してみて下さい。清潔なお口で出産に臨むのが、赤ちゃんのためにも一番良いことなのです。
なお、妊娠中で歯科治療に適した時期は、一般的に妊娠中期(5〜8ヵ月)とされています。これ以外の時期は、産後1ヵ月くらいまでは応急処置程度になりますので目安にして下さい。

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  ◆ 予防講座第2回(出産後の歯のトラブルとケア)

第2回目は「出産後の歯のトラブルとケア」についてお話したいと思います。
出産後は、昼夜なく新生児の世話に追われる生活の激変ぶりに心身のバランスがくずれ、身体にトラブルが出やすい時期でもあります。すでに妊娠中からホルモンの状態が変化し、炎症などへの耐性が弱まっています。ですから歯茎の腫れや出血などの症状が出やすいのです。昔から、出産を機に歯が悪くなるのは「妊娠中に胎児にカルシウムを取られるから」なんて言われますが、これはまったくの迷信。現在では各種デ-タから影響がないことが報告されています。
それではトラブルの原因は何でしょうか? 上記のように身体のバランスがくずれたり、育児の疲労で歯ブラシがおろそかになって、症状が出現することがほとんどです。ですから、初期の歯のトラブルであれば、毎日の生活の中できちんと歯ブラシをする習慣をつけ、お口の中のメンテナンスを行っていくだけで、トラブルはずいぶん軽減されます。
しかし、症状が進行し、歯の中や歯茎が化膿してしまうと、薬が必要になってきます。ここで大きな問題に直面します。授乳期間中は、薬によって母乳中に薬が排泄され、幼児にも影響が出る可能性があるのです。ですからお子さんのためにも、日頃のケアをしっかりと行ない、薬の服用は避けてあげなければなりません。どうしても薬が必要になった時には、化膿止めなら母乳への排泄のない「セファロスポリン系」や、影響のほとんどない「ペニシリン系」など使ってもらうよう、医師や薬剤師に相談してみて下さい。
また、お母さんのお口の中の状態が悪いままですと、お子さんのお口の中にその菌が感染し、将来的に虫歯などにかかりやすくなります。お母さん自身が味わってきた歯の苦労は、お子さんにはさせたくありませんよね。
そのためにも、マタニティの時期、または出産後落ち着いた時期に、一度は歯医者さんを受診し、虫歯チェックと歯石除去、歯のクリ-ニングなどひと通りの
ケアをしてもらうことをお勧めしたいと思います。

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  ◆ 予防講座第3回(子どもの歯並びと矯正)

 第3回目は「子どもの歯並びと矯正」についてお話したいと思います。
最近は、子供たちの半数以上が歯並びに何らかの問題を抱えている、と言われています。歯並びに問題があると噛み合わせが悪くなり、食べ物が上手に噛み切れないまま飲み込んしまって、消化不良で胃腸へ負担をかけます。また歯ブラシが届かずきれいに磨けない箇所が発生し、虫歯や歯周病といった病気がひどくなる場合もあります。更に噛み合わせのズレが成長発育中に影響を及ぼし、顔のバランスがくずれたり、顎関節症を起こすこともあると言われています。 
 こうした症状の原因には、食べ物の変化による咀嚼力の低下や骨格系の変化、
あるいは遺伝的な問題などが考えられます。しかもこれらが複雑に絡み合っていることが多く、はっきりしないというのが現状です。ですから予防もなかなかできません。しかし、やわらかい食べ物が顎の発育を弱めているのは確実で、お子さんには少しでもよく噛んでもらうよう、調理方法や材料など考えてあげてください。
では、いつごろから、何をしたらよいのでしょうか。いくつか代表的な例をあげて説明しましょう。
まず、いわゆる受け口といわれる下顎の過成長の場合。これは乳歯の時期からできることが多いため、お母さんが「おかしいな」と思ったら、かかりつけの先生や小児歯科の先生に相談してみましょう。ただし、1−2歳のお子さんの受け口は自然に治る事が多いので、そのまま様子を見ることがあります。
次に、前歯が永久歯に生え変わった時、斜めに生えたり、ねじれて生えたりする場合です。これは比較的お母さんの目に止まりやすいため、心配して受診される方が多いですが、このケースの大半はしばらくするときれいに並んでくるので、あまり心配する必要はありません。しかし、後ろの歯の大きさや噛み合わせによってはすぐに治療が必要な場合もあるので、一度診てもらう必要があるでしょう。
最後に、歯が大きくて窮屈に並んでいたり、歯が重なっている場合です。このケースは、乳歯がすべて永久歯に生え変わった時でもガタガタになる確率が高いので問題です。治療法としては2つの方法があります。ひとつはすべての歯が永久歯に生え変わるまで何もせず、経過を観て、その時点で矯正を始める方法。もうひとつは取り外しができる矯正装置などを積極的に用いて顎の発育を促進させ、並びやすくしてあげる方法があります。歯列やお口の中の状態によって、この2つの方法を選択していきます。

以上のように、ひと口に歯並びが悪いといっても、たくさんの状態と方法があります。やはり最後は、どの先生でも診てみないと何とも言えないのが実情です。お母さんにとっては分からないこと、心配なことがいっぱいあると思います。まずは矯正の専門医でなくて構いません。これからは、ご近所に何でも相談できる"かかりつけの先生"を作っておくことが、お子さんやご家族にとって大切なことではないでしょうか。

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  ◆ 予防講座第4回(虫歯予防について)

第4回目は「虫歯予防について」です。これから2回にわたって予防についてお話ししようと思います。
 毎日、私のクリニックにも虫歯ができた多くのお子さんが治療に来ます。誰もが苦手な虫歯の治療、できればお子さんには受けさせたくありませんよね。では、虫歯をできなくするにはどのようにしたら良いのでしょうか。それには、まず虫歯の正体を知ることが大切です。
虫歯とは、歯に穴があいて痛くなる病気ですよね。歯に穴があくのは、歯の表面が溶けてしまうからです。それでは、そのときどんなメカニズムが働いているのか御存知ですか?
ほとんどの方の歯の表面には、虫歯菌(ミュータンスレンサ球菌)が付着しています。これは小さい時にお母さんの口から伝播するといわれています。そこに食べ物として砂糖が入ってくると、菌はそれを餌にし、強い酸を放出します。さらにグルカンという、歯の表面に菌をつける接着剤のようなものまで生成するのです。接着剤で守られた菌は次々と酸を作り、歯の表面を溶かしていきます。それが進むと穴があいて、やがて神経にまで達します。すると、あのなんともいえない強い痛みが襲ってくるのです。
 最近分かってきたことですが、人間は虫歯菌を持つのと同時に、甘いものを食べても虫歯にならないよう、小さな穴なら自然に治してしまう仕組みを持っています。唾液などに含まれるカルシウムが歯の穴に集まり、塞ぐように修復していくのです。ですから、溶ける量より塞ぐ量のほうが大きければ、虫歯にはならないわけです。簡単なことですよね。ですが虫歯ができる子は、どうしてもできてしまうのです。
実はそこに個人差があります。なかなか虫歯にならない方は、塞ぐ力が高いと推測されます。それではその力が少ない方は、どうすればいいのでしょうか。そこで、まず穴をあける菌の餌を少なくするように、食後すぐに歯ブラシをしたり、甘いものの摂取を少なくすることです。そのうえで歯を溶けにくくするために歯の表面を硬くするフッ素を塗ったり、穴を塞ぐ力を大きくするためにキシリトールをとったりすると良いでしょう。
そのあたりの選び方、作戦の立て方については、次回お話したいと思います。皆さん、今日から頑張って溶ける量より塞ぐ量を増やすようにしましょう。

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  ◆ 予防講座第5回(虫歯予防について、2回目)

第5回目は「虫歯予防について、2回目」です。
毎日、私のクリニックにも虫歯ができた多くのお子さんが、治療に来ます。だれもが苦手な虫歯の治療、できればお子さんには受けさせたくありませんよね。お母さんだって毎日歯ブラシさせていますし、甘いものもあまり与えていない方が多いのです。でも虫歯はなかなか減りません。一体どのようにすれば良いのでしょうか。
 今までは、甘いものと歯ブラシが虫歯予防の中心でした。今でもその2つは非常に大切ですが、最近はそれ以上に、いろいろな予防方法が出てきました。現在ほとんどの方が行っているフッ素塗布やシーラント、さらにキシリトールガムの摂取、PTCやPMTC、虫歯菌の除菌など、いろいろな方法が提唱されています。ですので、今までの方法にこれらの新しい方法を効果的に組み合わせることによって、より効果的に虫歯を予防できるようになるでしょう。しかし闇雲にいろいろ行なうと、かえって悪化させることもあります。したがってキチンと作戦をたてて、虫歯を予防していくことが必要なのです。
もう少し詳しくお話ししましょう。
虫歯になるのは、食べ物以外にも多くの原因があります。
虫歯の原因となる細菌の活動性やお口の中の量、唾液の性質と量、酸を中和する力、それに呼吸の仕方や歯並びなど、それらの複数の原因が重なり合って、虫歯を作るのです。もし虫歯がなかなか減らないお子さんがいたら、この中から何か特定の原因が見つかるかも知れません。最近の歯医者さんでは、そうした個々の原因を調べてくれるところも増えてきました。その結果に基づいて、それぞれオーダーメイドで予防法を処方してもらい、お子さんの虫歯予防に役立ててみてはいかがでしょうか。
例えば、歯を溶かす力が強い細菌をお持ちの方には、歯にできた小さな穴を塞ぐ力を持つキシリトールを摂取させたり、細菌の量が多い方には歯の表面に膜のように付着した細菌のかたまりをとるPTCを行ったりします。掛かりつけの歯医者さんへ行き、先生とどこが悪いのかをよくお話しをして、虫歯に勝つ作戦を立てて計画的に虫歯をやっつけてください。

 さて、今回で私の連載は終りです。まだまだお伝えしたいこと、教えて差し上げたいことがいっぱいありますが、またどこかの機会でお話できればと思います。また当院のホームページ,www.fenest.comにもいろいろ書いてあります。是非参考にしてください。一年間ご愛読ありがとうございました。


 

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